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古民家の地震対策と耐震性|倒壊リスクや補強費用の相場を解説

 

 

この記事でわかること、ポイント

  • 古民家の耐震性と伝統構法の特徴
  • 地震の揺れを逃がす柔構造の仕組み
  • 倒壊リスクを高める腐朽やシロアリ被害
  • 重い瓦屋根が建物に与える影響と対策
  • 耐震診断の種類と実施するメリット
  • 耐震補強工事にかかる費用の相場と補助金
  • 複数の業者で見積もりを比較する重要性

 

日本各地に残る古民家は、その重厚な佇まいや歴史的な価値から、多くの人々を魅了し続けています。

しかし、これから古民家に住もうと考えている方や、すでに所有している方にとって、もっとも大きな懸念材料となるのが「地震」ではないでしょうか。

日本は世界有数の地震大国であり、いつどこで大きな揺れに見舞われるかわかりません。

築年数が経過した建物に対して、倒壊の不安を感じるのは当然のことと言えるでしょう。

実際、「古い家は地震に弱いのではないか」というイメージを持たれることは少なくありません。

確かに、現在の建築基準法が制定される前に建てられた古民家は、現代の住宅とは異なる構造特性を持っています。

しかし、それは必ずしも「弱い」ことを意味するわけではありません。

伝統的な技術で建てられた家屋には、独自の揺れに対する抵抗力や、力を逃がす仕組みが備わっているのです。

重要なのは、その特性を正しく理解し、現在の状況に合わせて適切な手入れや補強を行うことです。

古民家で地震に備えるためには、まず建物の構造を知ることから始まります。

伝統構法と呼ばれる作りは、地面に固定せずに石の上に柱を建てる石場建てなどが特徴で、これらがどのように地震のエネルギーを受け流すのかを理解する必要があります。

また、長年の風雪に耐えてきた建物だからこそ、経年劣化による腐朽やシロアリの被害が進行している可能性も否定できません。

これらは地震時の倒壊リスクを大きく高める要因となります。

本記事では、古民家の地震に対する安全性やリスクについて、構造的な視点から詳しく解説します。

さらに、安心して住み続けるために必要な耐震診断の流れ、基礎や壁に行う耐震補強の具体的な方法、そして工事にかかる費用の相場や利用可能な補助金制度についても網羅的に紹介します。

古民家での暮らしを守るために、どのような対策が必要なのかを一緒に見ていきましょう。

 

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古民家は地震に弱いのか?構造と倒壊リスク

ポイント

  • 伝統構法と在来工法の違い
  • 揺れを逃がす柔構造の特徴
  • 倒壊につながる腐朽やシロアリ
  • 重い瓦屋根が与える影響

古民家が地震に対してどのような強さや弱さを持っているのかを知るには、まずその構造を深く理解する必要があります。

現代の一般的な住宅と古民家とでは、地震の揺れに対する考え方や耐え方が根本的に異なります。

一概に「古いから弱い」と決めつけるのではなく、どのようなメカニズムで建物が維持されているのかを見ていくことが大切です。

多くの古民家は、現在の建築基準法が制定される昭和25年(1950年)以前に建てられています。

この時代の建物は、伝統構法と呼ばれる技術で造られていることが多く、現代の在来工法とは異なる力学で成り立っています。

この違いを把握せずに、現代の基準だけで耐震性を判断しようとすると、本来の良さを損なってしまったり、過剰な補強をしてしまったりする可能性があります。

ここでは、古民家特有の構造と、地震時にリスクとなり得る要因について詳しく解説していきます。

 

伝統構法と在来工法の違い

古民家の多くは「伝統構法」という建築様式で建てられていますが、現在主流となっている木造住宅の工法は「在来工法(木造軸組工法)」と呼ばれます。

この二つは、地震の力にどう対抗するかという設計思想が大きく異なります。

まずはこの違いを明確にしておくことが、古民家の耐震性を考える第一歩となります。

在来工法は、コンクリートの基礎に土台を固定し、柱や梁を筋交い(すじかい)や合板などの耐力壁で固めることで、地震の揺れに「耐える」構造です。

壁を硬く強くすることで、建物が変形しないようにガッチリと固める「剛構造」と言えるでしょう。

現在の建築基準法は、基本的にこの考え方に基づいて耐震性能を規定しています。

そのため、壁の量や配置バランスが重視され、金物を使って接合部を強固に固定することが求められます。

一方、伝統構法は、柱や梁を太くし、貫(ぬき)と呼ばれる水平材を通して木材同士を組むことで骨組みを作ります。

最大の特徴は、壁で固めて抵抗するのではなく、木材のしなりや接合部のめり込みなどを利用して、地震のエネルギーを吸収・分散させる点にあります。

また、基礎においても、石の上に柱を置くだけの「石場建て」が採用されていることが多く、地面に固定されていません。

これにより、大きな地震が来た際には柱が石の上を滑ったり浮いたりして、建物本体への衝撃を逃がす仕組みになっています。

このように、在来工法が「剛」の強さで地震に抵抗するのに対し、伝統構法は「柔」の動きで地震をやり過ごすという違いがあります。

古民家が地震に弱いと言われる理由の一つは、現代の耐震診断基準が在来工法をベースに作られているため、伝統構法の「粘り強さ」が正当に評価されにくいという事情があるのです。

しかし、実際に過去の大地震でも倒壊を免れた古民家が多く存在することは、この構造が持つ潜在的な能力を示唆しています。

 

揺れを逃がす柔構造の特徴

伝統構法に見られる「柔構造」とは、具体的にどのようなメカニズムで地震の揺れに対応しているのでしょうか。

先ほど触れた通り、古民家はガチガチに固めるのではなく、あえて変形を許容することで倒壊を防ぐ設計になっています。

柳の木が風にしなるように、建物全体が揺れに合わせて動くことで、破壊的なエネルギーを分散させるのです。

この柔構造の要となるのが、木組みによる接合部です。

釘や金物を極力使わず、木と木を組み合わせて固定する「仕口(しぐち)」や「継手(つぎて)」という技法が使われています。

地震の際には、この接合部が動いて木材同士が擦れ合うことで摩擦が生じ、ブレーキのような役割を果たします。

これを「減衰性能」と呼びますが、建物が揺れれば揺れるほど、この摩擦力が働いてエネルギーを消費し、揺れを収束させようとする力が働くのです。

また、「貫(ぬき)」の存在も重要です。

柱と柱の間に通された貫は、土壁の下地となるだけでなく、柱同士をつなぎ止める役割を持っています。

地震で建物が傾いたとしても、貫が粘り強く抵抗することで、急激な倒壊を防ぐ効果があります。

土壁そのものも、初期の揺れには抵抗しますが、ある程度の変形が進むとひび割れてエネルギーを吸収し、最終的には骨組みだけ残して崩れることで、柱や梁を守るという考え方もあります。

さらに、石場建ての基礎構造は、究極の免震装置とも言えます。

地面が激しく揺れたとき、柱が石の上を滑ることで、建物には直接的な衝撃が伝わりにくくなります。

現代の免震住宅がゴムやダンパーを使うのに対し、古民家は自然石と木の柱というシンプルな組み合わせで同様の効果を狙っていたわけです。

ただし、大きく滑りすぎて足元が外れてしまえば倒壊につながるため、足固めと呼ばれる部材で柱同士をしっかり連結しておくことが不可欠です。

このように、古民家の柔構造は非常に理にかなったシステムですが、現代の数値計算だけでその安全性を証明するのは容易ではありません。

しかし、古民家で地震対策を考えるなら、この「揺れを逃がす」という特性を殺さずに、弱点を補うような補強計画を立てることが何より重要です。

単に壁を増やして固めるだけでは、かえってバランスを崩し、危険な状態を招くこともあるからです。

 

倒壊につながる腐朽やシロアリ

構造的な特徴とは別に、古民家が地震で倒壊してしまう最も直接的な原因として挙げられるのが、部材の劣化です。

いくら優れた伝統構法で作られていても、それを支える柱や土台が腐っていたり、虫に食われてスカスカになっていたりすれば、本来の強さを発揮することはできません。

実は、地震による古民家の倒壊事例の多くは、こうしたメンテナンス不足が引き金になっています。

特に注意が必要なのが、湿気による「腐朽(ふきゅう)」です。

木材は湿気を帯びた状態が長く続くと、腐朽菌が繁殖して強度を失っていきます。

古民家の場合、床下の通気性が悪くなっていたり、雨漏りが長期間放置されていたりすると、見えないところで腐食が進行していることがあります。

特に、地面に近い柱の足元や、お風呂場・台所などの水回りはリスクが高い箇所です。

そして、もう一つの大敵が「シロアリ」です。

シロアリは湿った木材を好んで食べる習性があり、土台や柱の内部を食い荒らします。

表面上はきれいに見えても、叩いてみると中が空洞になっているというケースも珍しくありません。

シロアリ被害に遭った部材は、地震の強い力がかかった瞬間にあっけなく折れてしまいます。

これが建物の層崩壊(1階部分が潰れて2階が落ちてくる現象)を招く大きな要因となるのです。

古民家を再生する際には、まずこうした劣化箇所を徹底的に調査し、悪い部分は新しい木材に取り替える「根継ぎ」などの修繕を行う必要があります。

これは耐震補強以前の、建物を維持するための基本治療と言えるでしょう。

もしこれから古民家を購入したり、リフォームを検討したりするのであれば、構造計算や壁の強さを気にする前に、まずは床下や屋根裏の健全性をチェックすることが先決です。

健全な木材であって初めて、伝統構法の粘り強さが発揮されることを忘れてはいけません。

 

重い瓦屋根が与える影響

古民家の外観を象徴する立派な瓦屋根ですが、地震の観点から見ると、その「重さ」がリスク要因として指摘されることがよくあります。

物理の法則として、物体の重心が高い位置にあればあるほど、そしてその重量が重ければ重いほど、揺れによる遠心力は大きくなります。

頭の重い建物は、地震の際に振り子のように大きく揺さぶられやすいのです。

多くの古民家では、土を厚く載せた上に瓦を葺く「土葺き(つちぶき)」という工法が採用されています。

これは断熱性や調湿性に優れ、瓦の固定力を高める効果がある一方で、屋根全体の重量は非常に重くなります。

現代の軽いスレート屋根や金属屋根に比べると、その重さは数倍にも及ぶことがあります。

大きな地震が発生した際、この重たい屋根が激しく揺れることで、それを支える柱や壁に過大な負荷がかかり、耐えきれずに倒壊してしまうケースがあるのです。

しかし、瓦屋根が必ずしも悪者というわけではありません。

伝統的な古民家は、最初からこの重い屋根を支えることを前提に、太い柱や梁を使って頑丈に設計されています。

つまり、構造体が健全であれば、重い屋根であっても十分に耐えられるポテンシャルを持っているのです。

問題なのは、先述したような腐朽やシロアリ被害で構造体が弱っている場合に、屋根の重さが致命的なダメージを与えてしまうことです。

対策としては、屋根を軽量化するという方法があります。

具体的には、土を取り除いて瓦を桟木(さんぎ)で固定する「引掛け葺き」に変更したり、より軽量な防災瓦や金属屋根に葺き替えたりするリフォームです。

屋根を軽くすることで、地震時の揺れ幅を小さくし、建物への負担を大幅に軽減することができます。

ただし、屋根を軽くすると建物の重心や揺れ方が変わるため、バランスを考慮した補強計画が必要です。

また、古民家らしい景観を損なわないよう、デザイン面での配慮も求められるでしょう。

 

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古民家で地震対策を行う際の方法と費用

ポイント

  • 現状を知るための耐震診断
  • 基礎や壁に行う耐震補強
  • 工事にかかる費用の相場
  • 利用できる補助金や減税制度
  • 複数の業者で比較と見積もり
  • 古民家と地震への備えまとめ

古民家の特性やリスクを理解した上で、実際に地震に備えるためにはどのようなステップを踏めばよいのでしょうか。

安心して暮らすためには、漠然とした不安を抱えるのではなく、科学的な根拠に基づいた診断を行い、適切な処置を施すことが不可欠です。

しかし、どこまで補強すればよいのか、費用はどれくらいかかるのかといった悩みは尽きないものです。

耐震改修は、建物の状況や目指す安全性、そして予算によって選択肢が大きく変わります。

フルリノベーションに合わせて徹底的に補強する場合もあれば、生活エリアだけを重点的に守る部分補強という方法もあります。

また、自治体からの補助金制度をうまく活用することで、自己負担を抑えながら安全を手に入れることも可能です。

ここからは、具体的な診断の流れから工事の内容、費用の相場、そして業者選びのポイントまで、実践的な情報をお届けします。

 

現状を知るための耐震診断

古民家の地震対策を始めるにあたって、最初に行うべきなのが「耐震診断」です。

これは人間でいうところの健康診断のようなもので、建物の現在の耐震性能を数値化し、どの程度の地震まで耐えられるか、どこに弱点があるかを明らかにする作業です。

専門家による客観的な診断なしに、いきなり補強工事を行うのは無謀と言えるでしょう。

適切な治療方針を決めるためには、正確な診断が欠かせません。

耐震診断には、大きく分けて「一般診断」と「精密診断」の2種類があります。

一般診断は、主に目視や聞き取りによって行われる簡易的な診断で、リフォームの初期段階や概算を知りたい場合に適しています。

一方、精密診断は、壁を一部剥がして内部を確認したり、床下や天井裏に潜って詳細に調査したりするもので、具体的な補強設計を行うためには必須となります。

古民家の場合は構造が複雑なため、伝統構法に詳しい建築士による精密診断を受けることが推奨されます。

診断の結果は、「上部構造評点」という数値で示されることが一般的です。

この評点が1.0以上であれば「一応倒壊しない」、1.5以上であれば「倒壊しない」と判定されます。

逆に1.0未満の場合は、大地震で倒壊する可能性が高いと判断され、補強の必要性が示されます。

多くの未改修の古民家は、この評点が低い傾向にありますが、これは先述の通り、現代の計算式が在来工法ベースであるため、伝統的な粘り強さが反映されにくいことにも起因します。

そのため、古民家の診断には「限界耐力計算」や「時刻歴応答解析」といった、伝統構法の特性を考慮できる高度な解析手法が用いられることもあります。

これによって、一般的な診断では「危険」と判定された建物でも、実は十分な耐震性を持っていることが証明されるケースもあります。

診断を依頼する際は、その業者が古民家の構造に精通しているか、適切な診断方法を選べるかを確認することが非常に重要です。

 

基礎や壁に行う耐震補強

耐震診断の結果に基づいて、具体的な補強プランを立てていきます。

古民家の耐震補強は、建物の良さを活かしつつ、弱点を補う形で行うのが理想的です。

主な工事箇所としては、基礎、壁、そして接合部が挙げられます。

それぞれの場所でどのような工事が行われるのか、詳しく見ていきましょう。

まず基礎についてですが、伝統的な石場建ての場合、地震時に柱が石から外れてしまうのを防ぐことが最優先です。

コンクリートを打って基礎を新設し、柱とアンカーボルトで連結するという現代的な手法もありますが、これでは石場建て特有の免震効果が失われてしまうこともあります。

そのため、あえて石場建てのまま残し、柱同士を足元でつなぐ「足固め」を強化したり、柱が大きくジャンプしないような金物を取り付けたりする方法が選ばれることも多いです。

どちらを選ぶかは、地盤の状況や居住者の考え方によります。

次に壁の補強です。

耐震性を上げるためには、地震の力に抵抗する「耐力壁」を増やすことが基本です。

しかし、古民家の開放的な間取りを損なわないよう、バランスよく配置する必要があります。

土壁を塗り直して強度を回復させたり、土壁の内部に木製の格子を入れたりして粘り強さを高める方法があります。

また、景観を壊さないように、アクリル板を使った透明な耐力壁や、格子状のデザイン壁を採用するケースも増えています。

さらに、最近では「制震ダンパー」を取り入れるリフォームも注目されています。

これは、壁の中に特殊な装置を組み込み、地震のエネルギーを吸収して揺れを抑えるものです。

古民家の柔らかい構造と相性が良く、繰り返す余震に対しても効果を発揮します。

建物を固めすぎずに揺れを制御できるため、伝統構法とのハイブリッドな対策として有効です。

いずれの工事も、単に強くなれば良いというものではありません。

古民家全体のバランスを見ながら、一箇所に力が集中しないように設計することが大切です。

特に、腐朽した柱の根継ぎや交換といった基本的な修繕とセットで行うことで、初めて確実な効果が得られることを忘れないでください。

 

工事にかかる費用の相場

耐震補強を検討する上で、最も気になるのが費用の問題でしょう。

古民家のリフォームは、一般的な住宅に比べて個別性が強く、建物の状態や広さ、希望する補強レベルによって金額が大きく変動します。

ここでは目安となる相場観と、費用が変わる要因について整理します。

古民家耐震補強の費用目安

工事の種類 費用相場(目安)
耐震診断(精密診断) 20万〜50万円
部分的な補強(壁数カ所など) 100万〜200万円
全体的な補強(評点1.0以上へ) 200万〜500万円
屋根の軽量化(葺き替え) 200万〜400万円
フルリノベーション(耐震含む) 1,000万〜3,000万円

上記のように、耐震補強単体であれば数百万円程度で済む場合もありますが、屋根の葺き替えや水回りの改修、断熱工事なども含めた大規模なリノベーションとなると、一千万円を超えることも珍しくありません。

特に古民家の場合、解体してみて初めて柱の腐食が見つかり、追加の補修費用が発生するというケースも多々あります。

費用を左右する大きな要因は、現在の劣化具合と、目指す耐震等級(安全性)です。

評点を0.5から1.0に上げるのと、1.5まで引き上げるのとでは、必要な壁の量や工事範囲が異なります。

予算に限りがある場合は、命を守ることを最優先に、寝室やリビングなど長時間過ごす部屋だけを強固にする「シェルター型補強」や「部分補強」を選択するのも一つの賢い方法です。

これなら費用を抑えつつ、万が一の際の生存確率を高めることができます。

また、屋根を軽くする工事は高額になりがちですが、耐震効果が高いだけでなく、雨漏り防止や外観の美化にもつながるため、トータルの費用対効果で判断することをおすすめします。

見積もりを取る際は、総額だけでなく、「耐震工事」としての費用がいくらなのかを明確にしてもらうことで、優先順位をつけやすくなります。

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利用できる補助金や減税制度

耐震補強工事は決して安い買い物ではありませんが、国や自治体が用意している補助金制度や減税措置を賢く利用することで、負担を大幅に軽減できる可能性があります。

日本では、地震対策を国家的課題として推進しているため、耐震改修に対する支援が手厚く用意されています。

まずチェックすべきは、お住まいの自治体が実施している「木造住宅耐震改修補助事業」です。

多くの自治体では、昭和56年(1981年)以前に建てられた旧耐震基準の住宅を対象に、耐震診断の費用や補強工事の費用の一部を助成しています。

補助額は自治体によって異なりますが、工事費の80%〜100%(上限100万円〜200万円程度)が支給されるケースも少なくありません。

中には、古民家再生に特化した独自の上乗せ補助を行っている地域もあります。

また、税制面での優遇措置も見逃せません。

耐震改修工事を行うと、確定申告をすることで「所得税」の特別控除を受けることができます(投資型減税)。

これは工事費用の10%程度が所得税から控除される仕組みです。

さらに、翌年の「固定資産税」が一定期間減額される制度もあり、通常は1/2に減額されます。

これらの申請には、建築士が発行する「増改築等工事証明書」や「住宅耐震改修証明書」が必要となるため、工事契約前に業者へ確認しておくことが大切です。

注意点として、補助金を受けるためには「工事契約前」や「着工前」の申請が必須となることがほとんどです。

工事が終わってから申請しても受け付けてもらえないため、計画の初期段階で役所の窓口やホームページで最新情報を収集してください。

また、補助金の対象となる工法や業者が指定されている場合もあるので、その条件を満たせるかどうかも確認が必要です。

古民家での地震対策は、こうした公的支援をフル活用することが、予算内で理想の住まいを実現するための鍵となります。

 

複数の業者で比較と見積もり

古民家の耐震補強を成功させるために、最も重要と言っても過言ではないのが「業者選び」です。

先述の通り、古民家は特殊な構造をしているため、一般的なリフォーム業者や新築メインの工務店では、その特性を十分に理解できないことがあります。

「とにかく金物で固めましょう」「すべて解体して新築そっくりにしましょう」といった提案ばかりされてしまい、古民家の良さが失われてしまう恐れもあるのです。

信頼できるパートナーを見つけるためには、必ず複数の業者から見積もりを取り、提案内容を比較検討すること(相見積もり)をおすすめします。

同じ耐震補強でも、業者によってアプローチの方法や費用は驚くほど異なります。

ある業者は壁の増設を提案し、別の業者は制震ダンパーを推奨するかもしれません。

それぞれのメリット・デメリットを聞き比べ、なぜその工事が必要なのか、納得できる説明をしてくれる業者を選ぶことが大切です。

業者を探す際は、ホームページなどで「古民家再生の実績」や「伝統構法への理解」を確認しましょう。

施工事例写真を見て、デザインのセンスや工事の品質をチェックするのも有効です。

また、耐震診断の結果に基づいた具体的な数値目標(評点など)を示してくれるかどうかも、信頼性を測る一つの指標になります。

もし、どの業者に頼めば良いかわからない、あるいは地元の優良業者を効率よく探したいという場合は、リフォーム一括見積もりサイトなどを活用するのも一つの手です。

例えば「タウンライフリフォーム」のようなサービスを利用すれば、古民家のリフォームに対応できる複数の会社へ一度に相談でき、プランや見積もりを比較することができます。

プロの視点からの多様な提案を受けることで、自分たちの家に最適な地震対策が見えてくるはずです。

大切な家を守る工事ですから、焦らずじっくりと、信頼できる依頼先を見極めてください。

 

古民家と地震への備えまとめ

ここまで、古民家の耐震性や構造的な特徴、そして具体的な地震対策について解説してきました。

古民家は決して「ただ古いだけの弱い家」ではありません。

伝統的な技術によって培われた柔構造は、現代建築とは異なるアプローチで地震の揺れに対応する力を持っています。

しかし、経年による劣化や、現代のライフスタイルとの不整合がリスクとなっていることも事実です。

重要なのは、正しく恐れ、正しく備えることです。

耐震診断で建物の健康状態を把握し、必要な修繕と補強を行うことで、古民家はこれからも長く住み継げる安全な住まいとなります。

費用はかかりますが、補助金を活用したり、優先順位をつけた工事を行ったりすることで、現実的な解決策は見つかるはずです。

地震はいつ起こるかわかりませんが、備えがあれば被害を最小限に抑えることができます。

古民家という素晴らしい財産を次世代に残すためにも、まずは現状を知ることから始めてみてはいかがでしょうか。

 

記事のまとめ

  • 古民家は現代住宅とは異なる伝統構法で建てられている
  • 伝統構法は揺れを逃がす「柔構造」が特徴である
  • 石場建てや木組みの変形が地震エネルギーを吸収する
  • 現代の耐震基準だけで古民家の強さを測るのは難しい
  • 腐朽やシロアリ被害が倒壊の最大の原因となる
  • 重い瓦屋根は揺れを増幅させるため対策が必要
  • 耐震診断には一般診断と精密診断がある
  • 古民家の診断は伝統構法に詳しい専門家に依頼すべき
  • 補強方法は基礎の強化や耐力壁の増設などがある
  • 制震ダンパーなども古民家と相性が良い
  • 費用相場は部分補強で100万円〜、全体で数百万〜
  • 自治体の補助金や減税制度を必ず確認する
  • 複数の業者で相見積もりを取り提案を比較する
  • タウンライフリフォームなどで優良業者を探すのも有効
  • 適切なメンテナンスと補強で古民家は地震に耐えられる

 

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